第24回
自家製酵母パン 太郎山
ベーカリー専用洗浄機
2022年01月19日取材
ふるさと北海道へ戻り独立開業、こだわり小麦を使用した全粒粉の自家製酵母パンを提供するパン店「太郎山」
夫婦2人で力を合わせる田中賢太郎さんと美菜さん
北広島市の大曲地区に2021年12月、1軒のパン店が開店しました。無農薬・有機栽培の小麦をすべて使う全粒粉の自家製酵母パン。パン食文化を広めたいという「太郎山」の田中さんご夫妻を訪ねました。
田中賢太郎さん
1978(昭和53)年、釧路市生まれ。小中高時代を札幌・小樽・旭川で過ごし、大学は東京へ。卒業後、山梨のキャンプ場などで働いた後、31歳の時、東京のパン店「ブーランジェリー ラ・テール」に就職。5年勤務後、渋谷の名店「ルヴァン」で修業。長野県上田市の系列店に移動し4年の経験を重ねる。2021(令和3)年、ふるさと北海道に戻り妻・美菜さんと12月に独立開業。
1978(昭和53)年、釧路市生まれ。小中高時代を札幌・小樽・旭川で過ごし、大学は東京へ。卒業後、山梨のキャンプ場などで働いた後、31歳の時、東京のパン店「ブーランジェリー ラ・テール」に就職。5年勤務後、渋谷の名店「ルヴァン」で修業。長野県上田市の系列店に移動し4年の経験を重ねる。2021(令和3)年、ふるさと北海道に戻り妻・美菜さんと12月に独立開業。
自家製酵母を使って力強いパンをつくる
細長いカウンターには20種類ほどのパンが並ぶ
オープンから1ヶ月ですね
田中
2021(令和3)年の12月24日にパン店をオープンしました。北広島市大曲地区のご近所の人が多数来店してくれました。冬季の開店だったこともあり、大雪の時には静かな日もあります。新年が明けて、少し落ち着いてきたかな、という状況です。コロナ禍ではありますが、店のオープンに躊躇はありませんでした。自分がパンを学び、技術を高め、素材にこだわり、ここ北海道でパン文化を広めたいという自然の流れの中での開店でした。特にコロナを意識することなく準備してきたと思っています。
北広島IC近く、道道1080号沿いにある店舗
力強さと躍動感をほうふつさせる店舗ロゴ
開店準備はどうでしたか?
田中
わたしの実家が今、札幌の平岡にありまして、その近くに家族4人で引っ越してきました。この家から車で15分圏内にパン店を開ける物件を探していました。2021年の7月くらいでしょうか。ちょうどコロナ禍の真っ最中でしたが、この物件に出会って決めました。店内の壁は自分で塗り、看板も手作りしました。オープン前、パン酵母の調子を整えることが大変でしたね。多くのパン店ではイーストというパン酵母からパンをつくりますが、わたしたちは自家製の酵母を使っています。グリーンレーズンに付着している菌を採取して熟成。ワインではないですがアルコールのような液体がベースです。これに全粒粉をまぜて、小麦の酵母種をつくります。なので、かすかな酸味が香る風味が特徴です。開店前は気温が低くなる秋から冬の時期だったこともあり、寒い季節に酵母の状態を良くしていくことに最大の注意を払っていました。
お店の名前は?
田中
店名は最後に修業していた上田市にある山の名前からです。働いていたパン店からまっすぐ前に見えた山。そこで学んだこと、経験したことを忘れないようにと思いつけました。自分も「賢太郎」という名前なこともあり、太郎に愛着がありました。店内の商品としては、現在20種類くらいあります。自信がありおすすめしているのは「カンパーニュ」(1ホール1,400円+税以下同、1/2ホール700円)です。人気なのは「全粒粉クロワッサン」(200円)でしょうか。つづいて「玄米キッシュ」(280円)が売れています。
自信があるカンパーニュ
店内の製粉機で挽くこだわりの小麦
小麦にこだわりが?
田中
パンに使う小麦は十勝の会社を通じてキタノカオリやモンスティルだったり、十勝夢ブレンドという道産のものです。これに、栃木の無農薬で栽培された小麦。長野の上田市で有機農法でつくられた小麦。道内で有機栽培されている農家さんの小麦をブレンドしています。これらの小麦は店内で挽いています。木製の製粉機には石臼が入っていて、小麦の外皮も含めて全部を使っています。なので、無農薬と有機栽培の小麦にこだわっているのです。全粒粉は酵母にすごく影響します。発酵力が強くなります。味も香りもぜんぜん違います。挽きたてがいいというわけではないのですが、挽いて、小麦の熱がとれて、翌日くらいに使うとパンが一層香ばしくなります。全粒粉をつかうことでしか出せない味や香ばしさがありますね。クロワッサンやパイにも使っています。なので、一般的なフワッとしたタイプではなく、ザクっと、ガリッとした食感のクロワッサンになっています。これは、タマゴを入れていないことにもよります。
31歳の時にパン職人の道に入り修業
作業台でクロワッサンを手早く整形する
パン職人を目指すきっかけは?
田中
2011(平成23)年、東日本大震災があった年。31歳でした。当時、自分は山梨県のキャンプ場で働いていました。子どもたちと一緒にパンを焼くというワークショップがありました。そのイベントの火起こしを担当していました。パンづくりって楽しそうだなあ、パンっておいしいなあ、と感じていました。で、震災をきっかけに自分の人生・仕事を改めて考え直したのです。その結果、東京で働こうと。ではなにをするか。「パンだ」と思い、何店か電話して募集がないか問い合わせました。「年齢は31歳です」などと自己紹介すると、店主にすごく怒られるのです(笑)。「30歳過ぎではじめられるほど甘くはないんだよ」と。でも、ブーランジェリー ラ・テールの社長だけは「じゃあ、やってみるか」と言ってくださった。パン職人の道がスタートしました。そこで働いている先輩たちに恵まれましたね。パンの魅力を教えてもらい、どんどんはまっていきました。
仕事はどんな感じでしたか?
田中
最初はサンドイッチ部門からです。食パンを切ったり、タマゴサラダをつくったり(笑)。最初の3年くらいは全くパンにさわることさえ許されませんでした。そのあと、一気にいろんなことを教わり、パンづくりがおもしろくなりました。パンって、同じ材料で同じ工程でつくっても、人が代わるとパンが変わるのです。不思議なくらい同じにならない。ここがおもしろいところです。よりよいパンをつくりたい、と思いはじめて今に至っています。純粋に「おいしい!」ものをつくりたいからですね。
現在はどのような生活ですか?
田中
朝は4時から4時半くらいに店に入ります。店を閉めるのは18時。そこからかたずけをして帰宅するのは20時から21時になりますね。妻とは最初のパン店に勤めていた時に知り合いました。そこで結婚。上田の店も一緒に働いていました。千葉県出身です。妻は生まれて初めての北海道。「寒い!」と言っています(笑)。まだ車の運転をしていないのでドキドキです。子どもは1年生の女の子と1歳の子がいます。
洗浄機の前で笑顔の店主・田中さん
ウィンターハルターの洗浄機はどうですか?
田中
洗浄機は以前の店では使っていませんでした。自分たちの店を持つにあたって、妻と私の2人でやろうと決めていました。小人数でのオペレーションなので最初から洗浄機は導入しようと思っていました。忙しい時には非常に助かります。パンづくりはタイミングを逃せない、手が離せない時がどうしてもあるのです。そんな時、洗い物がたまってくると、平行して勝手に作業が進んでくれる機械があると助かります。主に細かいボウルやゴムヘラなど道具類を洗うのに使っています。汚れもよく落ちて便利ですね。不満はまったくないのですが、しいて言えば立ち上げに時間がかかるところが難ですね。もうちょっと早くなるといいと思いますが、自動立ち上げのタイマー機能などを使いこなしたいと思っています。
開店祝いとともに娘さんの習字が飾られる
今後の抱負をお聞かせください
田中
ハード系の自家製酵母パンは、普段の食事として食べている人はまだまだ少ないなあという印象です。ひとりでも多くパン食のスタイルの人が増えて、定着していってほしいと思っています。ハード系のパンは、たしかに外側は硬いのですが、中はしっとり、もちっと柔らかいです。使っているのは、小麦と酵母と水と塩のみ。シンプルで安心安全なパンです。毎日の食事として食べてもらえればうれしい。当店のパンは、4〜5日は常温で保存できます。それ以降は冷凍してもらえれば長期に保存が可能になっています。わたしは音楽が好きでして、音楽仲間と山登りもしょっちゅう行っていました。東京や長野にいる時は、八ヶ岳・北アルプス・南アルプスなど、冬も夏も登っていたほどです。余裕ができれば、道内の山も登ってみたいですね。
■販売協力店
金丸富貴堂株式会社
■設置機器
・ベーカリー専用洗浄機 Washerei(ウォッシャライ)UC2.0